コラム

星野真里の“いろどり日記”
「I’m home」

24.12.02いろどり日記

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「ただいま」
家の中に誰かいてもいなくても、帰ったときには必ず口にしているこの言葉。
当たり前に使っているけれど、そのような当たり前は初めから存在しているわけではない、なんてことを考える。
繰り返し耳にして、繰り返し声に出して、そして何度も「おかえり」と迎えてもらってきたからできた当たり前。
いつも通り、いつもと同じ。これほどの安心感があるだろうか。

思えば幼いころから家にいるのが大好きだった。
早く家を出たい、一人暮らしをしたいと思っていたころでさえ、積極的に外へ遊びに行く子ではなかった。
代り映えしない家の中で、狭い部屋の中で過ごした多くの時間、私は何をしていたのだろう。
考えてみるとなんだか面白い。
数えきれないほどの兄弟げんかも、親との衝突も、大泣きした夜も、本当にちっぽけな空間で起きた出来事で、そんな時間を積み重ねて今がある。
いいじゃない、いいじゃない、ちっぽけで。だってそれでいてなんだか楽しいんだもの。
あれ?今、悩んでいたことってなんだっけ?
なんだか心が軽くなった。

先日まで撮影していたドラマでは、とても潔い生き方をしている女性を演じさせていただいた。
自分にとって何が大切なのかを見極め、手にしたその宝物をしっかりと抱きしめられる人だった。
役は役、自分は自分。
重ね合わせることはないけれど、役の人生に思いを馳せる時間は自分を知る時間にもなる。
目の前にある幸せを当たり前だと思ってない?
もっともっとって、新しい何かを求めてない?
多くを望むのはけっして悪いことではないけれど、手にしている大切なものを見直すだけでこんなにも心穏やかになるんだよ。

そう教えてもらったような気がする。
photo by mari hoshino
さあ、これからますます乾燥が気になる季節がやってくる。
しみが、しわが、くすみが、はりが、、、言い始めたらお肌の悩みはきりがない。
だけどこの季節だからこそ、重ね付けする化粧水をぐいぐい吸収していく肌の力を感じることができるようになると思えば、楽しみにもなってくる。
今日も顔を洗えたこと。今日もお風呂に入れたこと。そして今日も家の中で安心して眠りにつけること。
いつも通り、いつもと同じ。当たり前の幸せがある我が家。


浮いたり沈んだりする心が、あるべき場所に戻ってゆくような夜にそっと声に出してみた。
「おかえり」
目を閉じれば暗闇で、けれどここにも居場所があった。


鍵穴はするりとわたしを受け入れて「おかえり」「ただいま」みたいに響く
photo by mari hoshino
星野真里

星野真里

女優・タレント。1981年7月27日生まれ,埼玉県出身。O型。1995年にNHKドラマ『春よ、来い』でデビュー。同年にTBS系ドラマ『3年B組金八先生』に坂本乙女役で出演し、認知度を高めた。

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