コラム

星野真里の“いろどり日記”
「Exciting You!!」

24.04.01いろどり日記

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朝の六時、起床。
すっかり明るくなった空の下、わたしは何度も笑顔になる。
微かで、それでいて確かな成長を毎日のように感じさせてくれる植物たちに、わたしの口元はゆるみっぱなしだ。

暑くない?寒くない?
水は足りている?
太陽の光は十分かしら?

葉の色つや、新芽の大きさ、土の水分量など、言葉では通じ合えない彼らの変化を感じようとする時、
まるで生まれたばかりの赤ん坊に接しているようだなと思う。

おなかすいた?
それともねむい?
おむつをかえてほしいのかな?
photo by mari hoshino
まだ言葉の通じない娘に、答えが返ってくるはずないと分かりつつも声をかけ、
その気持ちに寄り添いたいと願うばかりの日々がよみがえってくる。
満足そうに動かす手足が、やわらかくなる表情が、ふたたび眠りについた穏やかな呼吸が彼女の言葉であり、
それが私たちのコミュニケーションだった。

なかでもひと際わたしをワクワクさせたものは、彼女の成長だ。
タオルを握るようになったその手が、わたしのことを追うようになったその瞳が愛おしくてたまらなかった。
この先どんな景色を見せてくれるのだろうかと期待せずにはいられなかった。

少し大げさにいうと、わたしはそんなふうに植物を愛でている。
どんな形の葉っぱになるのか、どこまで大きくなるのだろうかと想像するだけでワクワクが止まらないのだ。


ポワンポワン


メールが届いた。差出人は母だった。
ひらいてみるとそこには胡蝶蘭の写真が添付されていた。
「うす緑だった一番下のつぼみまですべて咲きましたよ」
ここにも植物の成長にワクワクしている人がいた。

その時、嬉しそうな母の顔がわたしと重なった。

あ、わたしもワクワクだ。

生命として誕生してから今まで、数限りない成長をし続けて生きているわたしだって、
きっと誰かをワクワクさせてきたはず。
いや、誰かだけではない。
わたし自身もわたしにワクワクしてきたではないか。
素直にごめんなさいと言えたとき、英語でコミュニケーションがとれたとき、
メイクに挑戦して今までとは違う自分に出会えたときやヒールの音を響かせながら街中をあるいたときだって。
誰よりもワクワクしていたのはわたし自身だ。


胸のうちに咲いているいくつもの花に、春の日差しが降り注いだような気がした。


ワクワクするとき、そこには未来がある。


まぶたを閉じて、大きく深呼吸をしてみた。
目をあけた瞬間、どれほどまでに世界は明るいのだろうか。


だって春。
はじまりの季節。
素直に胸をときめかせ、春の歌声に包まれて過ごしませんか。


ワ・ク・ワ・ク スタッカートの瞬間に花びらは解き放たれてゆく
photo by mari hoshino
星野真里

星野真里

女優・タレント。1981年7月27日生まれ,埼玉県出身。O型。1995年にNHKドラマ『春よ、来い』でデビュー。同年にTBS系ドラマ『3年B組金八先生』に坂本乙女役で出演し、認知度を高めた。

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